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社長ブログ
2025.07.01

備忘録 VOL.28「美意識を鍛える」

前回のブログで、空気に支配されず、空気に水を差せる自分の確立が大切だと申し上げました。
参考:社長ブログ 備忘録 VOL.27「空気と水」
実は、この「空気の支配」が日本人の価値創出に悪影響を及ぼしているという意外な見解に出会ったのです。著作家の山口周氏の「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか? 経営における『アート』と『サイエンス』」という著書に記されています。

日本人の不思議

日本人は類まれなる説明のできない「美意識」を潜在的にもっています。そのため、この情緒ともいえる美意識により、他の国ではノイズでしかない虫の音も楽しむことができます。そして、短歌や俳句、わび、さびの文化を生み育てているのです。情緒とは森羅万象をあるがままに受け入れる説明のできない美意識といえます。

今はまさに、正解のないVUCA※注の時代。必要なモノはすでに充足され、価値の評価が機能的価値から情緒的価値にシフトしています。

ところで、Appleの共同創業者の一人スティーブ・ジョブズ氏は、芸術とテクノロジーを融合させた天才です。彼は何度もNYメトロポリタン美術館収蔵の江戸時代の蒔絵印篭(まきえいんろう)を観に来て、「日本は200年も前にあんなに美しいモバイル端末を作っていたのに、どうして今はあんなに醜いものしか作れないんだ?」と語っていたようです。山口周氏は、世界を制したiPhoneの外形デザインと、アイコンのモチーフにこの蒔絵印籠が影響を与えていると洞察しています。 ライバルの日本製品のデザインは画一的で、画素数の向上などの機能的価値の向上に躍起になっていたのです。

それでは何故、類まれなる「美意識」をもつ日本人はそれをプロダクツに活かせないのでしょうか。

※注1 VUCA:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べたビジネス用語

空気へのトラウマ

生産性=価値(効果)÷人・物・金(コストダウン)

生産性を上げるとは分母の人・物・金を下げるか、分子の価値を上げることです。日本では、生産性向上とは、先ずは分母のコストを下げることと考えます。乾いた雑巾を絞るようにコストを下げて、売価を据え置いてきたのです。一方で、分子の価値はどうでしょうか。こちらは、情緒的価値ではなく機能的価値を高めることを優先してきました。

山口周氏は著書の中で、「説明できない空気」に支配されることで失敗を繰り返してきた日本人は、説明できない情緒的価値は避けて、説明できるコストダウンか機能的価値に活路を見出してきたのではないか、と述べています。つまり、説明できない美意識を内蔵しているために、説明できない空気に支配されることにトラウマを覚えているのではないか?と。

これからは、自らの美意識を鍛え、それを信じることが大切です。故に、商品戦略においては、独自の商品の世界観とストーリーを確立し、そこに共感する消費者を魅了することを目指したいと思います。